苦肉の策

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髭を剃り終えると何故かおばさんの逞しい指が鼻に。 太い指が俺の鼻の穴を広げて“チョキ”と左右一回ずつ鼻毛を切った。     俺は鼻毛なんか伸びてないぞ! 一回ずつしか切らないんなら切るなよ。 マニュアルにあるのかもしれないが、考えながらやれよな…     次は試験官のような物を持ってきて、俺の顔を擦り始めた。 どうやら血の巡りを良くするためらしく、擦るたびに“キュポン”と音がしている。 それらの謎の行為が終わると、寝かせてたイスを起こされ、俺は恐る恐る正面の鏡で『あれ』を見た。   やっぱりな。 もみあげ剃られてる…   俺のもみあげは定規で測ったかのように綺麗な直線に剃られていた。   丁度良い長さにするっていったじゃないか。 おばさんにとって『これ』が丁度良いのかよ!? ドライヤーで髪を乾かして軽く髪をセットすると 「お疲れさまでした~。コーヒーを用意してるので、よろしければ飲んで帰ってください」とおばさんが言った。   そうなんだよ。 この散髪屋に入った瞬間に俺は驚かされた。 この散髪屋にはカウンターが存在する。 何のためにあるのか分からなかったが、髪を切った後にコーヒーを飲むためだったのか。 コーヒーを飲みながら壁に貼ってある料金表に目を遣る。   学生は3700円で坊主が3000円!? 書き方が可笑しいだろ? それだと子供が3000円なのか坊主にするのが3000円か分からないし。   コーヒーを飲み終えて料金を払い、店を出た。 夕方になったせいもあるが、心なしか頭が寒い。 このもみあげは友達に何て言い訳しようかな。 マジック買って帰るか…  
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