第壱部

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西洋館に着くと、自動車の音を聞きつけて、若い女性が、飛び出して来た。 御苦労様です、私は、この家で、お手つだいをしています、スミ子と申します、今日、玉世お嬢様は、お出かけになって、おられまして、私一人なものですから、とてもおそろしくなり、警察へ電話を、いたしました」 スミ子さんは、青ざめた顔で言う「まずは現場を見せて下さい」 警部は、キビキビとした態度で、玄関を入って行く、部下の刑事が、後につづき、そのうしろから、ナニヤラ変な、ハカマをはいた、小柄な男が、ついて行った、玄関につづいた、ホールに入ると、ホーこれはひどいでスナー」警部は、思わずくちバシッタ、玄関ホールの中央には、大量のガラスが、メチャクチャにちらばり、大きな人形ケースの枠が、グニャッと潰れて、ムザンな姿で、ころがっていた。 人形は、はるか先の方に、ころがっていて、頭や、手足が、不自然なかたちに、曲がったまま、うつろな目が、シャンデリアのさがる天井を、見つめていた。 警部はキンチョーした声で「スミ子さんと、おっしゃいましたね、その時の状況を、お聞かせ下さい」 警部は、スミ子さんの正面に立ち、部下の刑事は、手帳を取り出すと、ボールペンをナメた、ハカマをはいた、小柄な男は、人形の近くを、ウロウロと歩き回わり、ニコニコしていた、スミ子さんは、ちょっと、考える風をしてから「私その時、台所に居りましたの、今日は、カレーライスにしようと、思いまして、御飯をシカケましてから、じゃがいもをむいて、人参を切りました、そして、玉ねぎを刻んでおります時に、玄関ホ-ルの方で、ガチャンと、ガラスが割れる音が、いたしました、ハッとして、これは大変だと、思いましたが、なにしろ、玉ねぎを、刻んでおりましたでしょう、なみだがポロポロ、鼻がグズグズしておりまして、スグにかけつけるわけには、まいりませんでした、テシューをつかったり、エプロンでなみだをふいたり、チョット鏡等を見たりして、大いそぎで、玄関ホールに行きました、そして、玄関ホ-ルの中を見ますと、人形がこわされていて、玄関ホールは、だれもおりませんでした」 スミ子さんは、シンチョーに、思い出しながら、答えた。
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