第壱部

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警部が、さらに何にか、言をうとした時、表に自動車の音がして、「あら、玉世お嬢様が、お帰りになられました」  スミ子さんは、叫ぶように言って、安心したのか、急に明るい顔になると、玄関から車庫の方へ、飛んでゆきました。 玉世さんは、車庫からもどるまでに、スミ子さんから、話を聞いたのでしょう、玄関を、足早やに入ってきて、ホールの惨状を、目にすると、「ワー、これはドーしたの」と、バンザイの様に両手を上げ、「ヒドイ」と言いながら、両手で、胸をかかえ、カワイソー」と、両手で口をふさぎ、目だけを大きく見ひらて、みるみる、青ざめてゆきました。 目だけを、大きくみひらいた、玉世さんは、ムザンなカタチで、天井を見上げている、人形に、ツカツカと歩みより、ハイヒールをはいた、美しい、スラリとした、長い足で、いきなり、人形のお腹をギューと踏みつけて、ポンと人形を、ケトバシたのでした。 目鼻立ちの、スッキリした、美しい玉世さんの顔が、さらに青ざめて、その凄惨さまで、加わった横顔は、この世のものとは、思えないほどの美しさ、ふらふらと後へ、倒れかかるのを、J田一耕助、サッと後より抱きかかえて、ロビーの、すみにあったソファーに、やさしく、すわらせたのでした。
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