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『ちょっと、お待ちになって!』
少女の叫びなど聞こえていないのだろうか。ウサギはアリスに構わずに走り、その距離はどんどん離されてしまう。
気の強い少女に火をつけるには十分すぎた。
道を外れ、村から離れ、景色が変わり、足元に大きな穴があることも知らず。
ウサギが角を曲がり姿を消したのを見て、アリスも大慌てで角を曲がる。
その小さな足に木の根が絡みつき、足をもつれさせて横転する。
『きゃあ!』
その先は、まぁ!
暗く深い穴が大きな口を開けてアリスを待ち構えていたではないか。
アリスはとっさに身を丸め、頭を抱えて穴へと落ちる。強く目を瞑ったものの、いつまでも訪れない衝撃を怪訝に思い、瞼をそっと開いた時。
『うそ、』
そこには摩訶不思議な国への入り口が広がっていた。
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