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聖堂に踏み入った修道女がまず目にしたのは部屋の一番奥に安置された聖母像であった。
一昔前は偶像崇拝は禁じられていたが、現在では布教活動に聖像は使われている。
その聖母像の祭壇の前に一人の男が跪いていた。
純白の外套を纏う金髪の男性、その外套の背には金色の十字が描かれている。
両手を組み、聖母像に祈りを捧げているらしい。
暫く待っていたが、一向に祈りを終える気配が無い。
「……おう、お客さんだぞい!」
呂律の回らない舌で叫ぶが、返答は無い。どうやら、無視されているらしい。
「聞こえてんにゃろ……ヒック……腹黒眼鏡!
わじゃわじゃ、人が休日返上で来てやってるちぇのに……ヒック……!」
修道女は側にあった長椅子に乱暴な動作で腰掛けた。
その衝撃で長椅子が僅かに軋む。
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