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あたしの叫びを聞いた瞬間、微笑んでいたはずの彼女(……じゃないよね、彼)は眉をつり上げ、口元を引きつらせた。
正直、可愛らしすぎて怖くもなんともないけど、余計な事は言わないでおこう。
「……何、あんたもしかして俺の事女だと思った訳?」
目の前の男の子は怒っているような、それでいてバカにした様な顔で首を傾げた。
確かに言われてみれば喋り方や雰囲気は男の子っぽい。
だけどやっぱり、外見はどこからどう見ても可愛い女の子だ。
「いや……たぶん、誰でもパッと見ただけならそう思うんじゃない?」
何も考えず口走った後に、「しまった」と思った。
引きつっていた彼の綺麗な顔が、怒りの色を増していく。
「あ、ご、ごめ…」
「あんた、名前は?」
と、とと取り敢えず謝らなければ!と思い口を開くと、不意に男の子が問い掛けてきた。
いきなり(しかも怒ってるっぽい美少年から)の質問に少し戸惑いながらも、彼の視線が「拒否権はない」と言っている気がしたので、素直に答えておく。
「……田沢都」
「ふーん。って事はお隣さんな訳ね」
彼があたしの家の表札を指差したので、訳が分からないながらもコクリと頷く。
すると、さっきの怒った顔はどこへやら。
彼はニヤッという表現がピッタリ当てはまる様な笑顔になり、口を開いた。
「何だ、もっと美人だったら良かったのに」
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