可愛いこ

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  「それに、料理以外の家事はちゃんと俺がやってるし」 そう、それがこいつの命令を無視出来ないもう一つの理由。 正直、あたしは料理以外の家事が得意じゃない。 この間白いシャツを洗濯したら、一緒に洗った服の色が移ってピンクになっていたり。 掃除をしていたら、棚下の隙間から掃除機が抜けなくなって、無理矢理引っ張ったら棚が倒れて大惨事になったり。 とにかく、苦手なのだ。 一方目の前のこいつは、大体の家事は得意らしい。 掃除も洗濯も、完璧にこなす。 ただし、料理の腕は最悪。 一昨日、朝にスクランブルエッグを作らせてみたところ、もう何を作りたかったのかすら分からない黒い塊が完成した。 あんなの食べたら病気になる。絶対。 ……という具合に、運悪くぴったりと利害が一致してしまったあたし達は、只今半同居生活中なのだ。 寝る時は自分の部屋に帰らせるけど、それ以外の時はずっとあたしの部屋に二人でいる。 朝は勝手に入るな、とは言ってあるが、そんなのは聞きやしない。 ……って言うか、鍵かけてあるのにどうやって入って来てるんだろうか。 とにかく、この事実は当然誰にも秘密。 学校の先生や、棗のファンにバレたらどうなるか………考えただけでも恐ろしい。  
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