その悪魔、突然に

3/12
前へ
/267ページ
次へ
  「はい?」 何が『そう言えば』なんだ、と聞き返したくなる様な突拍子も無い質問に、思わず間抜けな声が出る。 あたしは誤魔化す様に紙パックに入っているオレンジジュースを、細いストローでズズーッと音を立てて吸った。 今まで藍の恋の相談に乗る事は多々あったが、逆にあたしが彼女に男の子の話をした事はあまりなかった。 ましてや恋の相談なんてあるはずもなく。 いや、別に秘密主義とかそういうんじゃなく、ただ単に、あれだ。 初恋もまだな上、告白なんて事もされた経験がない、というだけ。 だからというか何と言うか、あたしはあまりこんな話の流れに慣れていない。 出来れば話を逸らしたいのだが…… 藍は興味があるのだろうか、らんらんと瞳を輝かせながらあたしを見つめている。 「……タイプっていうか、理想だけど」 藍の期待に満ちた視線についに折れてしまい、あたしはポツリと言った。 その瞬間、藍の表情がまたパァッと明るくなる。 「うんうん! そう言えば都のこういう話って聞いた事なかったし、教えて教えてー!」 藍はあたしと向かい合った机から身を乗り出し、弾んだ声を上げながら何度も頷く。 あたしはそんな彼女の様子に少し気恥ずかしくなりながらも、「普通で面白く無いとか言わないでよ?」と軽く釘を差し、ゆっくりと口を開いた。   
/267ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3267人が本棚に入れています
本棚に追加