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「はい?」
何が『そう言えば』なんだ、と聞き返したくなる様な突拍子も無い質問に、思わず間抜けな声が出る。
あたしは誤魔化す様に紙パックに入っているオレンジジュースを、細いストローでズズーッと音を立てて吸った。
今まで藍の恋の相談に乗る事は多々あったが、逆にあたしが彼女に男の子の話をした事はあまりなかった。
ましてや恋の相談なんてあるはずもなく。
いや、別に秘密主義とかそういうんじゃなく、ただ単に、あれだ。
初恋もまだな上、告白なんて事もされた経験がない、というだけ。
だからというか何と言うか、あたしはあまりこんな話の流れに慣れていない。
出来れば話を逸らしたいのだが……
藍は興味があるのだろうか、らんらんと瞳を輝かせながらあたしを見つめている。
「……タイプっていうか、理想だけど」
藍の期待に満ちた視線についに折れてしまい、あたしはポツリと言った。
その瞬間、藍の表情がまたパァッと明るくなる。
「うんうん! そう言えば都のこういう話って聞いた事なかったし、教えて教えてー!」
藍はあたしと向かい合った机から身を乗り出し、弾んだ声を上げながら何度も頷く。
あたしはそんな彼女の様子に少し気恥ずかしくなりながらも、「普通で面白く無いとか言わないでよ?」と軽く釘を差し、ゆっくりと口を開いた。
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