きみの手

可愛いこ

　
忘れてた。

あたしは昨日の席替えで最高のポジョンを手に入れた代償に、小姑みたいにうるさい（昨日発覚した）ジャガイモ君と隣の席になってしまったのだ。

「田沢さん、聞いてるっスか？」

「……聞いてる聞いてる」

「確実に聞いてないっスよね」

「聞いてる聞いてる」

「……田沢さん、英語だけはほんっとに理解しとかないと後々困るのは自分っスよ、まず今の時代受験や就職には勿論旅行とか生きていく上で英語というのは必要不可欠な教科でありうんたらかんたら…」

「聞いてる聞いてる」

眠いのと鬱陶しいので適当に聞き流していると、そこでジャガイモ君は急に言葉を切った。

……あ、やばい。流石に怒った？

恐る恐るジャガイモ君の表情を伺ってみると、別に怒っている訳ではないようなので、安心。

……ていうか、授業聞けって言う割にはよく喋るなこいつ。

「そう言えば」

「んー？」

「田沢さんって隣のクラスの棗君って人と付き合ってるんっスか？」

「ぶふぅっ！！！！」

思わず吹いてしまった。