その悪魔、突然に

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  「優しくて秀才で格好良くて背が高くて、金持ちな人かな」 少し照れながらも言い切るあたしに、藍が失望と呆れの混じった様な視線を向けてくる。 あたしはそんな彼女の視線を気にする事も無く更に続けた。 「それ以外の人とは一緒になれません」 「何様!?」 藍はそんなあたしの言動に納得がいかないのか、叫ぶ様に突っ込んだ後に脱力感たっぷりに溜め息を吐いた。 「いや、そんなに落胆されても……」 あたし、何かおかしい事言ったかな。 不思議に思いながら苦笑すると、藍は気持ちを切り替える様にゆるく巻いた綺麗な黒髪を撫でつけ、足を組み人差し指と親指を顎に添えて「ふむ」と思案顔になった。 「……でも、それだと都、一生彼氏出来ないと思うよー?」 何か今の藍のポーズ、某探偵少年みたいだな。 なんて呑気に考えてたあたしに、彼女はある種の死刑宣告をしてきた。 あたしが余りの衝撃に言葉に詰まってしまっていると、藍は形の良い唇をニィッと釣り上げて楽しげに笑い、更なる追い討ちを掛けてくる。 「だぁってそんな人、現実にいる訳無いし」 ――グサッ 「いても都みたいな一般庶民を相手にするとは思えないしー」 ――グサグサッ 藍の言葉はどちらも的を射ていた為夢見がちなあたしの胸に酷く突き刺さり、あたしは戦闘不能になる程の大ダメージをくらったのだった。  
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