その悪魔、突然に

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  と、我が家である小さなアパートが見えてきた所であたしは思考を途切らせた。 あたしが住む“オンボロアパート”の前に、何やら大きなトラックが停まっている。 何だろ、引っ越しかな。 そう言えばあたしの隣の部屋が空いてたから、そこかも。 アパートの脇に取り付けられた階段を上り、一番手前の『田沢』とあたしの苗字である表札が掛けられた扉のノブに手をかける。 ――ガチャリ あたしがドアノブを回したのと同じタイミングで隣の扉のノブが回る音がし、そして誰かが部屋から出てくる気配がした。 そちらを見ずに無視して部屋に入ろうか、とも考えたけど、出て来たのは恐らくこれからお隣さんになる人だろう。 一応挨拶はした方が良い、という結論に至り、ドアノブから手を放して“お隣さんになるかもしれない人”の方を向いた。  
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