君との距離

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『ギターとか、金管楽器できる彼氏ほしいな・・・』 ギターを弾く君と二人きりの夏休みの体育館。ちょっとした用で来たら、君が見え、無意識に足を向けていた。 「は?なにいってんだよ。」 『まぁ、もしも、の話ですけど。』 「一瞬ドキッとしたわ・・・」 君に出会うまで、本当の恋なんてしないって決めてた。 何年も前に、あたしみたいな奴を拾う人なんていないと気がついたから・・・。 『君のことじゃないよ。』 嘘。ほんとは君のこと。 でも、君には彼女が居るし、その前にあたしのこと好きなんて感覚はもとより、友達として扱われているのかが不明だから・・・ 不器用だけど、優しいから、一人で居るあたしを気にかけてくれてるだけ・・・それに、その優しさは、あたしだけに向けられていないなんてわかってる。 『ただ、セッションとかできたらおもしろいなーって。』 でも、その優しさに 「無理無理、お前に彼氏なんて・・・」 『わかってるよ・・・。』 下を向き、小さくため息をついた。 「なあ。」 『ん?』 前を向くと顎に手を当てられる・・・ 『ちょっ、え、あの・・・(滝汗)』 ときがとまった気がした・・・真顔で見つめられ、焦る自分・・・なんてそういうのにめっぽう弱くて、好きな君だから、なおさら焦る・・・ 「(笑って)何真っ赤になってんだよ・・・」 離れて、再びギターを抱え、話す。 『今すごくドキドキしてんだけど・・・』 「俺なんかにドキドキしてんじゃねーよ。」『いや、ないとわかってても来たらなんて焦るって・・・』 わかってる・・・だけど、期待してしまう自分が居る・・・ 『・・・ねえ、文化祭ライブするの?』 落ち着いたふりをして話しかける。 「勿論。」 『なんか弾いてよ。』 「じゃあ、触りだけな。」 『ん。』 ギターで19の〈あの紙ヒコーキくもり空わって〉の一番を弾き歌いしてくれる。 「ここまで。」 「なにしてるの?」 丁度よく事務の人が来た。 君は昼を買いに出かけると言ったから、私は帰ることにした。 夏休み終了直前のある日のそんな出来事。
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