拘束むくろと阿呆びゃくらん

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綱吉は先程から後部座席の窓から身を乗り出し、腕を大きく上下に振っていた。どうやら「早く来い」の合図らしい。 そんなにしきりに降ってはその細い腕が何処かに飛んでいってしまうのではないか。 骸はぼんやりとそんなことを考えながら、焦る様子もなく車に乗り込む。 「もうほんと、お前はどれだけオレに面倒かけるわけ」 綱吉は隣りに腰掛けた骸を横目で睨むも、返事は無い。 いつものことだ。わざわざ車を走らせ(自分の運転ではないけれど)迎えにきてやってると言うのに「ありがとう」でも「ごめんなさい」でもなく彼は無言を決め込む。 今日はこれから大事な先方との会議だと言うのに。なんてタイミングの悪い。遅刻でもしたらどうしてくれるんだ。 そう考えると段々腹が立ってきて、思わず声を荒げた。 「ねぇ、骸!聞いてる――」 自分で発した言葉がぴたりと途切れた。 骸は窓の外に目をやり、泣いていた。
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