第十章 灼熱機構

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「私に逃げ場はない。お前たちはもとより、”三色柱”や”教会”から逃れられると思えないもの。なら、ここで……」 深淵から此方を見つめる者たち。影の世界の住人にして、大陸の真なる支配者たち。 確かに先輩が俺達と和解したとしても、危険分子、あるいは裏切り者として処刑される可能性は高い。 無論、命を懸けて先輩を守るつもりだが、恐怖を拭い去れない気持ちは分かる。 「やめてください!そんな事をしても何の解決にもならない。だから……それだけはやめてください」 自分でも声が震えているのが分かる。 「私はお前を殺そうとしたのよ?私を生かしておいてお前に何の得があるというの?」 「損得の問題なんかじゃない!」 悲鳴にも似た叫びが漏れた。そう、損得なんてどうだっていい。 俺はただ、先輩に生きてほしいだけだ。一緒に笑っていてほしい。 「俺がそうあるべきだと思っているからです!先輩はこんな所で死んでいい人じゃない……!」 そう、誰よりも兄を慕ってくれた先輩。本が大好きな先輩。それが先輩の本当の姿だと俺は信じている。 「お前……」 レイシャ先輩が何かを言いかけたその瞬間、 木材が軋み、砕けた。 声を挙げる間もなく、燃え盛る天井が先輩目掛けて降り注いだ。
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