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「私に逃げ場はない。お前たちはもとより、”三色柱”や”教会”から逃れられると思えないもの。なら、ここで……」
深淵から此方を見つめる者たち。影の世界の住人にして、大陸の真なる支配者たち。
確かに先輩が俺達と和解したとしても、危険分子、あるいは裏切り者として処刑される可能性は高い。
無論、命を懸けて先輩を守るつもりだが、恐怖を拭い去れない気持ちは分かる。
「やめてください!そんな事をしても何の解決にもならない。だから……それだけはやめてください」
自分でも声が震えているのが分かる。
「私はお前を殺そうとしたのよ?私を生かしておいてお前に何の得があるというの?」
「損得の問題なんかじゃない!」
悲鳴にも似た叫びが漏れた。そう、損得なんてどうだっていい。
俺はただ、先輩に生きてほしいだけだ。一緒に笑っていてほしい。
「俺がそうあるべきだと思っているからです!先輩はこんな所で死んでいい人じゃない……!」
そう、誰よりも兄を慕ってくれた先輩。本が大好きな先輩。それが先輩の本当の姿だと俺は信じている。
「お前……」
レイシャ先輩が何かを言いかけたその瞬間、
木材が軋み、砕けた。
声を挙げる間もなく、燃え盛る天井が先輩目掛けて降り注いだ。
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