第十章 灼熱機構

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「危ないっーーーー!」 木材に押し潰された両脚の感覚がない。痛みと熱さと疲れで何が何だか分からなくなってきた。 ぐらり、と視界が揺れた。 「くそっ、意識まで……」 ”賢者”の副作用が今頃出始めたらしく、視界が霞む。瓦礫をどうにか退けようとする先輩の後ろ姿が二重にも三重にも見える。 「せ、先輩だけでも……早く……ここから……」 「ふざけんじゃないわよ!」 今日一番の怒声に意識が引き戻される。唖然とする俺を尻目に、先輩は燃え盛る瓦礫を素手で掴み、退かし始めた。 「熱ッ……ぐっ……!」 「先輩……」 俺を巻き込まないように魔術を使わずにやるつもりらしい。手を赤く腫らし、痛みと火傷に顔を顰めながらも瓦礫の山を片付けて行く。 「さっきまで散々死ぬなだのなんだの説教垂れておいて、自己犠牲って支離滅裂にも程があるわ!」 全ての瓦礫を退かし切ると、レイシャ先輩は俺をおぶり、出口を目指して歩き出す。情けない話だが、もう俺は歩けそうにない。
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