断章 そして、荒野で”魔女”は懺悔する

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「貴方も来ていたのですかーー”ゴースト”」 ローリエの呼び掛けに応えるかのように、漆黒の外套を纏う男性が突如として姿を現す。外套をはためかせ、その場に降り立つ。 顔には幾重にも包帯が巻かれ、その容貌は窺い知れない。包帯の隙間から覗かせた双眸はーーーー”虹”。 四肢には赤銅色の鎖が巻き付けられており、上から呪符が貼られていた。また、両手両足は手錠と足枷によって拘束され、その場から一歩も動けない様子だった。 「なるほど、アリスさんの差し金ですか……ふふっ、相変わらず抜け目の無い方です」 ローリエがにこやかな笑みを向けようとも、彼は微動だにしなかった。声はおろか呼吸音すら聞こえてこない。 「いざという時は私も介入するつもりでしたが、杞憂でしたね。彼らは順調に成長していってくれているようです」 生者であって、死者。その男には生気がない。 「……」 「しかしながら、課題は山積みです。特に“受胎計画”の実行まで半年を切った今、彼らにはこれまで以上に力と結束を強めてもらう必要があります」 それでも彼は確かにそこに存在する。存在しながら存在しない者。故に、彼に付けられた名はーーーー”亡霊”。
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