断章 そして、荒野で”魔女”は懺悔する

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第二暦九九九年。 十二月三十一日。 午後十一時三十分。 そこに昼夜の概念はなかった。真夜中にも関わらず、夕刻のような明るさ。 そして、天候という概念もない。常に轟々という何かが鳴る音だけが続いていた。 一人の少女が六つの墓標の前に佇んでいた。真紅のドレスという舞踏会のような華美な装いだが、真紅の髪の下から覗かせる表情は心痛そのものだ。 「間に合わなかった、か……」 彼女は懐かしい名が刻まれた墓石を愛おしげに撫でた。劣化が酷く、没年は読み取れない。 彼女は円になって並ぶ六つの墓標を一つずつ眺めて行く。 カイ=ラウクス。 リナ=クレスト。 シン=ラスティル。 ミント=ラウクス。 墓石は長い間碌に手入れもされていないらしく、非常に劣化が進んでいた。二つは没年はおろか名前すら読み取れない。 激動の時代を駆け抜けた七人の魔術師たち。果敢に”大陸の闇”に挑んだ彼らは”一人”を除いて既にこの世におらず、静かに眠りについていた。 最後の生き残りである”七人目”も行方が知れない。だが、今も世界のどこかで戦い続けている事は確かだ。 「最早、選択の余地はないわね。世界の運命は”マキナ”……お前に託すわよ」 彼女が顔を上げると、 そこは無人の荒野だった。 植物も動物も死に絶え、建物は跡形もなく崩れ去り、そこら中に焼死体が転がっていた。老若男女を問わない畏怖すべき虐殺。 赤茶けた大地は地割れを起こしており、緑という概念が失われたと錯覚するような殺風景。ここがかつては”学生街”として賑わっていたなど誰が信じられようか。 もっとも、この場所が特異点というわけでもない。大陸中がほとんど変わらない状態であり、まさしく世界は終焉の瀬戸際にまで来ていた。 空は暗黒に染まり、時折、遠方に蒼い雷が落ちる。アレは神の怒りの体現なのだ。 彼女が”現世”に復帰した時、既に世界は終焉と隣り合わせの状態であった。
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