断章 そして、荒野で”魔女”は懺悔する

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「お前ともっと早く会いたかった! ……あ~、このお約束台詞一度使ってみたかったんじゃ」 「それ以上無駄口を叩くと貴女から殺す」 ミネルヴァの戯けた様子が気に障ったらしく、イヴが突き放すような刺々しい口調で言い放つ。その双眸は既に虹色に染まっていた。 ミネルヴァは呆れたように肩を竦めて見せたが、やがてその口元には笑いが浮かんだ。強敵を前に昂揚しているらしい。 「やれやれ、それじゃ一応口上をやっておくとしようか」 ミネルヴァの双眸が赤く染まっていく。それは知恵の実の簒奪者たる証ーー”賢者”の証明だった。 「”十二規律”が”第三法”ミネルヴァ。又の名を”原初の賢者”アテネ」 片方は不敵な笑みを浮かべ、 「同じく”十二規律”が”法主”イヴ。又の名を”創世神”ゼウス”」 片方は冷酷な眼差しを向けた。 「ーーーー派手に行かせてもらうよッ!」 「ーーーー参る」 先に飛んだのは二つの影。並ぶようにして飛んだ二人を蒼い”共鳴線”が結ぶ。 「険悪な癖に”共鳴”出来るのね……勘弁して欲しいわね」 ローザが召喚したのは柄に薔薇のようにカットされた紅玉が埋め込まれた刺突剣。 「”不散の魔女”ローザ=レッドベル。……行かせてもらうわよ、反逆者」 薔薇の剣を握り締め、紅い髪を靡かせて駆け出す。 「見てて頂戴、カイ、リナ。お前たちが仲間と共に命がけで守ったこの世界。絶対に滅ぼさせやしない」 敵はあまりに強大。それでも世界が為、彼女は孤独に戦い続ける。 「私が必ず守るからッ!」 何もかもが失われたこの世界で。いつかの懐かしき日々を取り戻す為に。
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