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「それにしても、私の事を学園に報告しなかった事には驚いたわね。どういうつもり?」
そう言って、少々呆れたような表情をこちらに向けてくる。まあ、彼女がそう思うのも無理ないかもしれない。
俺も合理的な選択ではなく、極めて感情的な結論だとは思う。しかし、後悔はしていない。
「レイシャ先輩を学園から追放したところで根本的な問題は解決しません……それに先輩は兄さんの大切な人ですから」
兄さんがこの世に遺した唯一の愛弟子。俺はもしかしたらレイシャ先輩を通じて、兄さんとの繋がりを感じているのかもしれない。
「自分を殺そうとした相手を助けるなんて……理解出来ないわね、お前の思考は」
レイシャ先輩は溜息を吐くと、窓の外に視線を向ける。窓の外には青々とした緑が広がっていた。
「まあでも、一応礼は言っておくわ……ありがとう」
「……はい」
夏が近いらしく、時折、蝉たちの声が遠くか聞こえてくる。窓から吹き込んでくる風が優しく頬を撫でる。
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