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「最後にもう一つ訊かせて頂戴」
「はい、何でしょう?」
先輩は何やら躊躇っていたが、意を決したらしく、口を開いた。
「お前ーーーー」
「何故、”魔術卿”の力を使わなかったの?」
心臓がどくりと音を立てて鳴った。平静を装おうとするが、頭の中が真っ白になり、指先は震えていた。
「私があれだけ入念に準備をしたのはお前の”魔術卿”ーー”魔導書”使いとしての力を警戒しての事よ。二年前、数多の魔神の使役者を倒して得た、神すら殺せる能力……何故出し惜しみをするのか理解出来ないのだけれど」
二年前、確かに俺は”混沌一族”を壊滅させ、”魔術卿”となった。大陸に四冊しかない”魔導書”の契約者になったのだ。
俺はその能力の強大さを怖れ、力を封じる事にした。いつかまた必要となる日まで。
しかし、事はそれで終わらなかったのだ。
「……使えなくなったんです」
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