終章 風と共に

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「何ですって?」 「ある日、力を失ったんです。本当に突然、俺は”魔導書”を呼び寄せられなくなったんです」 一年前の夏の事だ。 きっかけも前触れもなく、まるで呼吸をするかのように自然と俺は力を失った。 必死になって、”魔導書”を呼び戻す方法を探したが、打つ手は見つけられなかった。 そして、俺は動揺する反面、安堵している自分がいる事に気付いた。身に余る程に強大過ぎる力はいつか俺自身を滅ぼす事になると、あの力は諸刃の刃だと薄々理解していたからだ。 いつしか俺は力を取り戻す事を諦めた。元々、不本意というか偶然得た力だったという事も拍車をかけた。 それに俺には”賢者”の力が残された。俺を”魔導書”へと導いてくれた”叡智”の魔術。 この力さえあれば自分や周りの人々を守れると思っていた。四月、フルレーティと戦うまでは。 もっとも、今回の件を含め、現実はそう甘くないと知らされたわけだが。
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