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淡い日差しに眠気という眠気を吸い取られ、僕はビルの建ちこめる道を通る。
今年の猛暑は確実に学生、ないし社会人の体力を奪っているに違いない。
さらにこの夏、暑さで頭がいかれたのか、異性と付き合う奴がたくさん出てきている。
まあそれも限られた人種だけであり、デブなどは二割り増しで暑さ倍増だ。
付き合ってる奴らは三割り増しだろうがな。
いろんな意味で。
かく言う僕は、二割増し対象者だ。
薄い茶色の髪茶色の目。
眉目秀麗。
顔が悪いと言うわけではない。
告白だって受けた。
断ったが。
要するに、気恥ずかしいのだ。
彼女、と言う存在がいらないというわけじゃない。
けどつくれば男友達からのひがみやらが殺到する。
そうやって馬鹿にされるのはとことん嫌いだ。
多少一般感覚の気恥ずかしいとはまた違うが、これもこれで気恥ずかしいの一種だろう。
「おーい! 来栖!」
と、後ろのほうからいやに大きい声が聞こえた。
振り向けば、クラスメイトの姿があった。
「よう! 今朝はいい天気だな来栖!」
この、喧嘩上等といわんばかりのツーブロックの髪型をした野郎は、親友である大北祐樹(おおきたゆうき)。
髪の色はオレンジ。
誰がどう見ても不良という人種である。
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