十章…幸せ

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(あっくんいつ起きるかな)  母の後を追って部屋に来た愛犬も、自分の寝床を占領している彼が気になる様子。  コンポの電源を入れている間に彼の手の臭いをかぐ。 「こら! チェリー」  普段はお利口なチェリー。もぞもぞと布団に入り顔だけを覗かせる。  頭を撫でてやると“この人誰?”と言いたそうな目。 「このお兄ちゃんはね、あっくんって言うの。お姉ちゃんの大好きな人なんだよ? お姉ちゃんが最近泣かなくなったのはこの人のお陰なんだ」  家族の前で泣かない私。妹のように可愛いく姉のように優しい“彼女”の前でよく泣いた。  黒く美しい毛を涙で濡らすと、まるで一緒に泣いているような潤んだ瞳で私の頬を舐めてくれる。  何を思ったのか!?  あっくんの上に何度もダイブするチェリー。  すかさず止めたけど時既に遅く……彼が目を覚ました。 「ん? 何で犬が居るんだ?」 「あっくんおはよ。よく寝てたね~。この子がチェリー。あっくんちのジミーよりかなりお婆ちゃんだけど」  普段の彼とギャップを感じる寝起き全開の顔に寝癖頭。 「ぷっ」 「ん? 何だよ」   笑いながら鏡を渡し“朝ご飯を取りに行く”と伝えリビングへ。  朝食を持って部屋に戻ると、屈託ない笑顔でチェリーと遊ぶ寝癖頭のあっくん。 「こいつ可愛いなあ!」 (こんなイイ顔出来るんだ……。お前の方が可愛すぎだし!)  微笑ましい光景に嬉しく思いながらも、犬にまでヤキモチを妬いてしまう。  緩やかに時間が流れ、予定していた10時に家を出た。 
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