十章…幸せ

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 車に乗り込むと、特にいつもと変わらない様子の父。 「おはよう」 博「おはようございます。夜中に勝手にお邪魔して……今日も送らせてしまってすみません。谷岡博彰です」 父「ああおはよう。気にしなくていいよ」  父は夢中になっている時以外そんなに話さない。  私は沈黙が嫌で、適当な話を振って盛り上げようと努める。 (心配しなくて平気みたい)  あまり顔を崩さず、それが当たり前のような2人は、雪が溶けるように少しずつ話しをし始めたから。   後部座席のあっくんをミラーで見ると少し緊張気味。  反対にいつもより口数の多い父の姿は、彼を気に入った事を物語っていた。  親にどう思われようが気にしない私だけど、父の嬉しそうな顔には少し弱い。  幼少期から家庭環境に恵まれていなかったせいか、いつもどこか寂しそうな目をしていたから。  そして、母子家庭と言う事以外よく知らないあっくんにも、同じような印象を持っていた。 (2人は少し似ているな)  自分の事を母よりも父側の人間だと思っていた私は、 (もしかしたら私とあっくんも似てるトコあるのかな)  漠然とした勝手な想像……そんな事で喜んでしまう。
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