289人が本棚に入れています
本棚に追加
車に乗り込むと、特にいつもと変わらない様子の父。
「おはよう」
博「おはようございます。夜中に勝手にお邪魔して……今日も送らせてしまってすみません。谷岡博彰です」
父「ああおはよう。気にしなくていいよ」
父は夢中になっている時以外そんなに話さない。
私は沈黙が嫌で、適当な話を振って盛り上げようと努める。
(心配しなくて平気みたい)
あまり顔を崩さず、それが当たり前のような2人は、雪が溶けるように少しずつ話しをし始めたから。
後部座席のあっくんをミラーで見ると少し緊張気味。
反対にいつもより口数の多い父の姿は、彼を気に入った事を物語っていた。
親にどう思われようが気にしない私だけど、父の嬉しそうな顔には少し弱い。
幼少期から家庭環境に恵まれていなかったせいか、いつもどこか寂しそうな目をしていたから。
そして、母子家庭と言う事以外よく知らないあっくんにも、同じような印象を持っていた。
(2人は少し似ているな)
自分の事を母よりも父側の人間だと思っていた私は、
(もしかしたら私とあっくんも似てるトコあるのかな)
漠然とした勝手な想像……そんな事で喜んでしまう。
最初のコメントを投稿しよう!