一章…無気力

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 私の名前は河原 美織。18歳  やたら肌の綺麗さにこだわるごく普通の女の子。  夜はスナックで働き昼間は基本爆睡。世の中の多くの18歳は制服を着て毎日学校へ通う。  でも、私が通っているのは通信制高校だ。  通信制とは月に一度だけ学校で勉強し、それ以外はTVやラジオで自宅学習をする。  普通の学校とは程遠い所だ。  高校生と実感できないくらい静まり返った教室。  誰がスキだなんて恋話で盛り上がる事もない。 「オハヨ。課題写させて」  ご挨拶程度の会話。  それ以上踏み込む事はなく、それが気楽な反面少し物足りなさも感じる……  けど、私にはお似合いだ。  普通高よりはずっとマシ。  1年前まで私も普通の高校に通っていた。  仮面を被り  嘘くさい笑顔。  いつ裏切られるか疑いながら群れているミンナ。  中学で学校に嫌気がさしていた私は、あえて群れの中に入ろうとは思わなかった。  イジメの対象にもならず普通に家と学校を往復する毎日。  たまたま隣にいる子と言葉を交わし、家が同じ方向、それだけの子と下校する。    適当に……  ただ適当に毎日を繰り返す。  友達がイナイはずの私の所には授業中や休み時間、毎日何通かの手紙が届いた。 “裏表ない” “話を聞いてくれる” “秘密をもらさない” “害のないモノ”  彼女達の目からは制服を着た人形に見えていた事だろう。  猫かぶりってヤツ?  15年の人生の中で知らず知らずのうちに、この世界のルールが染み付いていた。  そんな日々に嫌気がさし、誰にも教えず高校を辞めた。  そして今……  学校と言う檻を脱出しても社会と言う檻の中にいる私は、以前より分厚い仮面をつけている。
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