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煙草の煙りを掴もうと無意味に手をあげる。
「綺麗な赤……」
自然と呟いていた。
視界に入った左腕には幾つかの焼け跡がある。
何かの印のような“ソレ”を見ると、不思議と穏やかな気持ちになれる。
その内の1つは今も鮮やかに鮮明な赤……。
《小さな儀式》
自分の気持ちが迷子になった時には煙草を押し付けると、居るべき場所に帰る事が出来る。そんな気がした。
肌の焼ける匂いは
心地良く。
少し胸が痛くて。
私らしい。
「今回は少しやりすぎたな」
心にもない事を呟く。
意識が戻るのに時間がかかり、焼き過ぎてしまった。
端から見たらみっともない焦げ痕。
でもソレは私にとってどんなアクセサリーよりも眩しく、とても美しく見える。
深い深い赤……
深紅と言うのだろうか?
自分に流れる血液もこんなに綺麗な色なのか。
どんなに体が汚れようが血は皆同じ色だ。
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