懐中時計な、彼女。

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 懐中時計って、浪漫溢れているものだと思うの。  腕時計とかデジタル時計なんかじゃ相手にならないくらい、浪漫が溢れている気がしてならないの。  私の中ではおじいさんの古時計よりも輝いて見える。  懐中時計に蓋なんてついたらもう大変!言葉に出来ない それ は、懐中時計の周囲を異世界にしてしまう。懐中時計があるだけで、テレビゲームより身近な仮想空間がつくられる。…なんて、私だけの感覚でしょうけどね。  変な妄想を抱くほど、私は懐中時計に浪漫を感じているの。    8歳になった頃に懐中時計に一目惚れ。手を出したくても(手に入れた途端、浪漫を壊してしまいそうで)手を出せなかった私。  先日ようやっと踏ん切りがついて手に入れたけど、やはり予感は的中。…軽すぎるのです。  あまりの(重量ではない)軽さに落胆しつつも、ふと思ったの。  軽いのは当たり前か、って。  彼(または彼女)が理想の重さになるのは、私が寿命を全うした直後。私はその重みを感じることのないまま(心身一元論の通りに)消滅した、まさにその時。彼(彼女)は私が理想とした重量になるのだ、って。  そう思ったら、この軽さに一人納得出来たのです。    結局私は軽い懐中時計しか持てず、きっと生涯、理想とする それ を所有できないでしょう。  それでも私は思うのです。懐中時計は浪漫溢れるものだって。  ただただ懐に潜み続けて、たまに日に当たり、そして回り続ける懐中時計。(まるで無機物のようで)素敵!   「そのうち私は、彼(彼女)と入れ代わってしまったりして!」  なんて妄想も、懐中時計の重みを増す為のいい餌だと思ったり、ね!
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