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大天使様が職場を訪れたのは午後一時頃であった。接客モードのニシザワさんが馬鹿丁寧な言葉遣いで招き入れると、成る程、現れたのは確かに大物の空気を纏う、燕尾服姿の老人。
けれど、その大物感は大天使というより、むしろ『執事長』といった方がしっくり来るような、そんな気がした。老人はどうも初めまして、と軽く会釈をする。
「セバスチャンと申します」
私の背後で同期のヤマザキが噴いた。彼の中で何かがツボにはまったのだろう。ヤマザキのツボは特殊だ。
ニシザワさんは般若の如き形相でそれを睨み付けると、瞬時に接客顔に戻し『さあさ、こちらです』と言って、大天使様を誘導する。ヤマザキから離すつもりなのだろう。このあたりの対応は流石に上手い。
私はニシザワさんに補佐役を頼まれていたので、若干緊張しながらも後ろから着いていく。特に向いているとも思えないのだが、こういう役を任されるのは大抵私なのだ。
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