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まず案内したのは資料室。
創立三十周年を迎える『@ HEAVEN TIMES』社が誇る、過去天国で起きた様々な出来事を取りまとめた資料と、その記事が保管されているこの資料室は、天国広しといえども、とにかく何だか凄い場所である。ということを、ニシザワさんが力説している。私にはホラ話にしか聞こえない。
大天使様はというと『凄いですねえ』などと、一応、社交辞令めいたことを言ってはいたが、どこまで信用していたかなど知れたものではない。
と言っても、それは私が大天使様の人格を疑っているからなどという罰当たりな理由からではなく。決してなく。問題なのはこの資料室の『見た目』にあるのだ。
この資料室は、お世辞にも大きなものとは言えないのである。家の風呂場の方がまだ広い。
それもそのはずで、そもそも天国というのは平和だからこそ天国というのであって、平和ということはつまり『大きな変化が無い世界』と同意なのである。
それに加えて、この国の住人達は魂――既に死んで肉体を失っている人間なので、それ以上死ぬことはない。大きな事件や事故も起こり得ないのである。
要は、この国には記事にできるネタ自体が少ないということだ。
そこで高々三十年程度の資料を積み上げてみたところで、大した量になどなるはずもなく。結果、その資料を収める部屋自体も、小さなものとなってしまった……という訳である。
「ふむ……」
案の定、大天使様の表情には落胆の色が伺える。
ニシザワさんもその気配を敏感に察知したのだろう。颯爽と踵を返し、『では次へ参りましょうか』と、満面の笑みで促した。切り替えの早さも流石である。
これで性格が良ければ完璧なのだが……。そんなことを考えていたら謎のプレッシャーを前方から感じたので、私は心の中で口にチャックをした。
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