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   職場に着くと、ニシザワさん以外の全職員――と、いっても私とニシザワさん込みで六人しかいないのだが――が、各々の机で死んでいた。  死んでいた、というのは勿論比喩表現であるが、私たちの場合は冗談にならないので、事実だが比喩として用いたという……紛らわしいので具体的に説明すると、要は全員二日酔いに苦しみ悶えていたのだ。昨夜の飲み会の爪痕である。  私は先程あんな体験をしたせいか、頭が妙にぼんやりとしており不快さを忘れている。身体は痛いくらいに冷え込んでいるというのに。 「なんだ。元気そうじゃないか」  後ろで束ねられたブロンドの長髪。青い瞳に黒渕眼鏡が特徴的なニシザワさんが声をかけてくる。  私が軽く頭を掻くと、ニシザワさんは笑顔で、『死ねばよかったのに』と、酷い悪態をついた。これには苦笑いを返すしかない。  今だからこそ冗談で通用するが、生前にこの人と知り合っていたならば、十中八九訴訟を起こしていたと思う。悪態がどんな罪名になるかなど知らないが。 「さあさ、全員そろったところで働く働く!」  取材に出られないなら面白い企画の一つでも考えてみろ――ニシザワさんがそう言ったので、早速私は先程見た『消える赤い着物の少女』のことを記事にしたいと申し出た。  すると、ニシザワさんは放っておけば整っているはずの顔立ちを思いっきり歪め、不快を露骨に示す表情をつくり上げると、『そんな二日酔いの酔っ払い野郎が見たモンを記事にしてどうするのさ』と怒鳴って、更に続けた。  
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