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ぼくのじゃない
サラもしばらく経つと慣れてきて、一人で外へ散歩するようになっていった。そんなある日の午前中、サトシはいつものように学校にいた。
「ねえ、サトシくんちのネコちゃんあれから元気??」
クラスメイトの優里菜が休み時間に話しかけると
「え?サトシくんちネコ飼ってるの?」
と、他の生徒たちも集まってくる。
「うん、拾ったんだ。飼い主がみつかるまでうちで飼うことになってるんだ」
「そうなんだぁ!一度みてみたいなぁ」
「見においでよ。すっごいかわいいんだよ。ボクがピアノ弾いてると、ピアノの上に乗っかってくるんだ。それだけじゃないよ、寝てるときに僕の布団に入ってきたり、名前呼ぶとたまに返事もしてくれるんだ、それに・・・・」
サトシがあまりにも楽しそうに猫の話をするため、クラス中のみんながサトシの席に集まってうらやましそうにその話を聞いていた。
「でも、飼い主がみつかったらサトシくんちのネコじゃなくなるんでしょ?」
一人の女の子が言うと、楽しかった空気が一瞬ピタっと止まる。
「う、うん・・・」
「それって寂しくないの?」
今までサラの飼い主がみつかることばかり祈っていたサトシであったが、その言葉を言われるまでは、サラと離れるということをいつの間にか想像できなくなっていて、ずっと一緒にいるものだという矛盾が生じていた。その都合のいい矛盾を壊され、とてつもない絶望感に陥った。
「なんだ、じゃあサトシのうちのネコって言えないじゃん!」
クラスメイトの男の子が追い打ちをかける。その言葉に影響され、ゆっくりとサトシの席から人が消えていく。残ったのは優里菜一人だった。
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