人間の脅威

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【今まで河川敷に住んでたんだけど、ちょっと前にすごい棲みかをみつけたの。ちょっと遠いんだけど、森の中で空気もキレイだし人間も来ないし、なにより水もあるし、食べ物もいっぱいとれるの】 [へぇー] 上機嫌のミミの話を聞き、サラも少し嬉しくなって笑う。 【飼いネコのあんたたちより全然いい環境なんだから。気に入ったら仲間に入れてあげるわ】 [ありがとう] 一体どんな場所なのかワクワクしながらミミの棲みかへと向かう。何より仲間にしてくれるという言葉が、今まで猫の友達がいなかったサラにとって何よりも嬉しい言葉だった。 数十分ほど歩くと、やがてひとつの森が見えてくる。時は夕暮れ。薄暗く不気味にも見えるが、それが人間の寄り付かない理由でもあり、猫たちにとっては好都合だった。ミミがいつもの通りその森へ入り小さな道を抜ける。見失わないようにサラも必死で後を追いかける。草むらを通り抜けると、一瞬見失ったミミを遠目でみつけ、急いで駆け寄った。 ミミはその場にただ立ち尽くしていた。どんな素晴らしい棲みかなのかとはやる気持ちを抑えて顔を上げると、そこには信じられない光景が広がっていた。 昨日まで緑豊かだった景色が、地面を掘り返され土がむき出しとなり、あっけなくミミの棲みかは荒野と化していた。いるはずの家族の姿もそこにはない。
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