捨て猫

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ここ3日間大雨が続く。街外れの川の下流にあるこの街は、川が氾濫することもあり、街全体に警戒体制がしかれていた。そんなこともお構いなしに、傘を差し、カッパと長靴姿で川沿いを歩くのは今年の4月から小学1年生になったサトシだ。学校が大好きなサトシは夏休み明け初めての登校で期待に胸膨らませていた。しばらく歩き、橋へ通りかかると何やら鳴き声のようなものが聞こえた。 「ねえ、なんか聞こえない?」 一緒に登校していた近所の優里菜にサトシが聞いた。 「雨と川の音でなにも聞こえないよ」 「なにかの鳴き声がした気がするんだけど」 「気のせいじゃない?雨の音すごいもん」 「そうかなぁ」 「早くしないと遅刻しちゃうよ」 優里菜がそう言って歩き始めると、サトシも腑に落ちないような顔をしながら学校へと向かった。夏休み中ずっと楽しみにしていたはずの学校であったが、サトシは橋の下で聞こえた鳴き声が一日中頭から離れなくてそれどころではなかった。  学校が終わるとサトシはすぐに鳴き声のした橋のもとへと、やむことを知らず降りしきる雨の中、傘も差さず、カッパ1枚で向かった。その後を優里菜がサトシの傘を持って追いかける。  「サトシ君、帰りは川が危ないからそっち通っちゃダメって先生が言ってたでしょ!」 言葉を無視してサトシはまっしぐらに橋へと向かう。優里菜がやっと追いつくと、サトシは耳を橋の方へと傾けていた。  「ねえ、まだ朝のこと気になって・・・」  「しっ! 今聞こえた。ゆりなも聞いてみて」 二人が耳を傾けると、雨と川の流れる音の中からかすかに鳴き声のような音を拾った。  「わたしも聞こえた」 「いってみよう」 そう言うとサトシは橋の下の土手へと向かった。川はまだ氾濫していないものの、増水していて危険な状態であった。
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