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「サトシ君危ないよ!行っちゃダメ!」
「だって、もしなにかいたら川で溺れちゃうよ!!」
優里菜の心配をよそにサトシは土手へと下っていく。優里菜はただそれを見守ることしかできなかった。
しばらく時が経ち、数十分もの間待っていた感覚になっていた優里菜であったが、実際は2,3分でサトシは戻ってきた。その両手には大事そうに箱に入った猫を抱えていた。
「ネコ?」
「うん。ネコの鳴き声だった」
「かわいい。ヨシヨシ」
優里菜がびしょびしょに濡れたまだ若くて小さな猫をなでてあげる。
「捨てられたのかな?」
「うん・・・」
「どうするの?」
「うん・・・。」
サトシは言葉少なだった。
「わたしのうちじゃ飼えないよ。もう犬飼ってるし」
「ボクのうちは、・・・わかんない。飼ったことないから・・・」
「聞いてみたら?」
「うん。このままじゃこいつ死んじゃうもん」
サトシはそう言うと、1人猫を抱いたまま家へと向かう。
「あ、サトシ君、傘!!」
急いでサトシを追いつくも、両手に猫を抱えたサトシは傘が持てず、優里菜が傘を差して家まで送ってあげた。
「ただいま」
「サトシおかえり。雨大丈夫だった?」
「う、うん」
サトシはとっさに猫を後ろに隠した。
「何隠したの?」
ママが怖い顔でサトシを見る。サトシは恐る恐る猫をママに差し出す。
「猫?かわいい猫ちゃんじゃない、どうしたの?」
「橋の下に捨てられてたんだ。川あふれてこいつ溺れそうだったから連れてきたんだ。 ねえ、うちで飼っちゃダメ?」
「んー、かわいそうだけど、うちじゃ猫飼う余裕はないし、なによりパパが動物嫌いだからねぇ」
「やっぱりダメ?」
「一年前のことサトシも覚えてるでしょ?」
「うん・・・」
一年前、サトシがペットが欲しいと言った時もパパに猛反対され、結局飼えなかったことを思い出した。
「だめだよね・・・。わかった・・」
サトシは断られることをわかっていたかのように素直に肩を落とし、外へ出ようとした。
「待って。うちじゃ飼えないってだけよ」
「え?どういうこと?」
「飼い主を捜せばいいじゃない。探してみましょ」
「ママほんと?」
「もっちろん!」
「やったー!良かったなおまえ」
サトシは猫をギュッと抱きしめる。
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