自転車に乗る女

3/3
前へ
/34ページ
次へ
「あっ、あのう………。」 私は事情を説明した。 「物置でも、玄関先でも構いません。嵐が去るまで雨宿りしたいのですが。」 「それは大変でしたね。御主人様に確認をとってまいりますので、しばらくお待ち下さいませ。」 玄関でしばらく待っていると執事が帰ってきた。 「よろしかったら今日は泊まっていかれては?とのことです。このタオルで濡れたお身体をおふきください。」 予想外の返事に私は戸惑いを隠せなかった 「いえいえ、そこまでしていただかなくても嵐が止めば出ますから」 「天気予報では明日の昼までは回復しないとのことです。もし仮に止んだとしても、夜遅くになるでしょう。御主人様の許可をとってありますのでご遠慮なさらないで下さい。」 しばらく2人で話し合ったが素直に好意を受けることにした。 「こちらのお部屋をお使い下さいませ。廊下の突き当たりの左の部屋がお風呂場となっております。もうお湯を貯めておりますので、風邪を引かないうちにお入りになって下さいませ。」 言われがまま風呂場に向かうことにした。 久しぶりにまともに湯船に浸かれる。何日ぶりだろうか? 風呂場のドアを開けて驚いた。普通の風呂場よりかなりひろい。 誰か体の不自由な人でもいるのだろうか? 湯船も通常のよりも広く、横に何かの機械がある。 こので体の不自由な人を湯船に入れたりするのだろう。 すっかり体が温まりタオルで体を拭いている最中だった。 突然風呂場のドアが開き車椅子の男性が入ってきた。 私は驚き体をタオルで隠し、その場に座り込んでしまった。 「あっ、すいません。」 すぐに車椅子の男性は出て行った。 私は素早く衣服をまとい風呂場をでた。 廊下の窓から見える外の景色は先ほどよりもひどいものであった。 あのまま峠を越えようとしても途中で立ち往生していただろう。 下手をすれば怪我をしていたかもしれない。この屋敷の主人に感謝しなくてはならない。 部屋に戻り外の景色を眺めていたらドアをノックする音が聞こえた 執事が食事の支度が出来たので一緒にどうかということだった。 無碍に断らず、一緒に食事を取ることにした。 その場で屋敷の主人に御礼でもいわねばなるまい。
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加