一章

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 学園へと続く百メートル程の一本の長い坂道を、俺は全力で走っていた。片腕だけを制服に通し、五つあるボタンを全て開けたまま、もちろん髪の毛もボサボサだ。  俺が目を覚ますと既に八時五十分……完全に遅刻している。朝食も食べずに家を出た。家から学園までは走っても十分はかかる。  時間は九時を少し過ぎた頃か……。 「遅刻だぁ~!」  ガラッ! と乱暴に教室のドアを開ける。 「遅刻しましたぁ!!」  俺の大胆な登校にクラスメートの白い目が一気に突き刺さる。笑いを堪えるのに必死な男子と、窓の外を眺め此方には見向きもしない女子を除いて。 男子の方は元木慶吾‐モトキ ケイゴ‐こいつとは一週間前の入学式の日に親しくなった。 女子の方は榎本かりん‐エノモト カリン‐慶吾の話によれば、どこぞの社長令嬢だとか。 慶吾達との出会いは入学式の日に遡る。
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