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叔父からの電話の内容を母から聞くと、次のようなものでした。
「大輔は高校辞めて遊んでるんだって。若いのに、フラフラしてたんじゃダメだよ。そっちに働くとこがないんなら、俺の店を手伝ったらいいよ」
叔父は高校出て、体ひとつで東京に行き苦労したのち、酒屋を営んでいました。
叔父とは、子供の時に会った程度なので顔もハッキリとは思い出せませんでした。
数日後にまた電話をするから、どうするか決めておいてくれという話しでした。
母も兄も賛成でした。あとは僕のやる気次第です。
これは困った事になったなぁ。正直そう思いました。
バイトも続かないのに、東京まで行って果たして勤まるだろうか?
アパートで、別居なら少しは心か動いたかも知れないけど、子供部屋をひとつ空けての同居と聞いて他の人は恐らく考えないことばかりが僕を不安にするのです。
例えば、食事のこと。
当然のことながら、ひとつの食卓をみんなで囲んで食べる訳だから、親戚と言えども他人同然の中で耐えられるだろうか?
この食事に関しては「自分の部屋で食べさせてもらえないかな」と、真剣に母に訴えたのを良く覚えています。
それ程、対人恐怖症の僕には一番気がかりなことだったのです。
家族で話し合った結果、叔父のところでお世話になることになりました。
当時17歳、不安だらけの上京となりました。
修学旅行以来2度目の新幹線に乗り、1人東京に向かいました。
人目を気にして、ほとんどデッキにいました。
午後7時頃に東京駅に着きました。
叔父が迎えに来てくれていました。
東京駅から在来線に乗ったのですが、とても長く感じました。
途中からはタクシーで叔父の自宅まで行きました。
叔父の自宅に着くと奥さんか出迎えてくれました。
「お世話になります」と、頭をペコリ。
食卓には歓迎の寿司とビール。
明らかに、特上と分かる寿司。もちろん初対面!
「大輔くん、今日からは家族同然なんだから、遠慮しないで喰ったり飲んだりすればいいからね」
「はい。頂きます」
ハマチが旨い!
見たこともないネタもある。
普段飲まないビールがまわる。
緊張しながらも、美味しく頂きました。
明日から、酒屋見習い1年生だ。
頑張るぞ!と言うより、対人恐怖の僕がどこまで頑張れるのか不安だ。
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