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それから、俺は週5日8時間の労働を続けているけど、相変わらず、あの客は大体決まった時間にこのコンビニにやって来る。
あの客とはもちろん――スーツの似合う二十代後半の客。
あの日、1日来なかっただけで、次の日からは、またちゃんと来てる。
――でも、あの日以来、変わったことが1つ。
それは、いつもは2つ買っていくスウィーツが1つになったこと。
毎日2つだったものが、1つ減っただけ。
たかがそれだけのことでも、その客が1つしかレジに持ってこないことに違和感を感じる。
そして、どこか寂しげだ――
それは俺の勝手な想像に基く感想だけど。
――なんで、1つになっちゃったんだろ?
2つとも、あの客が食べてたとしたら……きっと、ダイエットでもしてるんだろ。
でも、それはきっと違う。
これが俺の勝手な想像ってやつなんだけど……あとの1つは、食べる人がいなくなった。
そう――例えば、恋人と別れたとか。
ロマンチィックに考えれば、そうなるけど、兄弟や両親へのおみあげだったってことも有り得る。
客のプライベートをいろいろと邪推するのは、人間観察が趣味の俺からしてみれば、自然な成り行きだけど、これ以上想像の域を越えることはなし、真実を知る術もない。
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