はじまりはいつも突然に

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階段を意気ようようと駆け上がる。ドアを開けると銅製のベルが懐かしい音を響かせる。 鼻孔に馴染んだ珈琲の香りが広がり、ほんのり薄暗い店内をランプ仕立ての電飾が照らしている。変わらない安堵の気持ちが不思議くらい僕の心を和ませた。 いつものように黙ってカウンター席に腰掛けた。サィフォンが並びバーナーが勢いよく火を灯している。その奥に見知らぬ若い女性が立っていた。『マスターとママさんは…』 『自宅じゃない、この時間は私だけだよ』彼女はそう言いながら長い髪をかき揚げながら、煙草に火をつけた。
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