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雨が降りしきる一つの街。 飲食店、娯楽施設、クラブ、風俗店……。数々の建物が所狭しと建ち並び、この星を支配している人類の繁栄を形にしていた。空に浮かぶ満月の淡い光より眩しく、街を彩るネオンの光は道行く人々を照らしだし、人々はその下を、さも当たり前のように歩いている。 平和…自由…畏れのない社会。 何も変わらず、平凡で在り来たりな世界。 見て、触れて、聞いたものがこの世の現物であると思われている世界。 ここはその塊とも言える場所だった。 故に人は当たり前にこの地を歩き、この地に暮らし、この地で自らの『存在』を確かめるように『存在』してきた。 ……しかし、それが通用するのは、彼らの『表の世界』だけ。 そこでは甘さと弱さは存在しない。 そこにあるのは血と狂気。 もし貴方がその地に足を踏み入れたなら、住人達が言葉ならぬ言葉で貴方を歓迎するであろう。 ‐「Wellcome, to the world to us.」‐ (‐ようこそ、我々の世界へ…。‐) そこは非現実の非日常が待つ世界。 そこには安息できる場所などない。 そこには『正義』など存在しない。 ……貴方は、この世界の『傍観者』にして『記録者』である。 足を踏み入れたその瞬間、貴方は表の世界から遮断される。 貴方の物語が始まりを告げる。 物語が終わる、その時は…。 この世界の終焉を意味しよう。 覚悟を決め、心せよ。 今、黒と赤に彩られた世界の幕が上がる。
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