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「そういえば名前は?」
「名前…」
コボルに向き合って、
「本当に生まれたばかりなのか?」
「私は何度も言っているんだが」
少し考えて、
「ミナ…は?」
「みな?」
「そう、君の名前」
「みな」
彼女は微笑んで、何度も呼んでいた。
「名前をくれたのか?」
コボルが言う。
「呼びにくいだろ?」
「ミナ…は、喜んでいる。ありがとうと言うべきなのか?」
「そりゃコボルに任せる」
「ありがとう」
なんだろう、私のこの嬉しさは…
「君の名前は?」
「私か?…松崎 真だ」
「シン」
ミナは嬉しそうに呼びかけてきた。
家族ってこんな感じなんだろうか…
実は私は記憶障害だ。
生まれてから15歳までの記憶がない。
孤児院で育ち、高校、大学とずっと一人で暮らしてきた。
卒業して、今の会社に入り、もう10年が過ぎた。
会社での地位も上がり、なんとなく過ごしてきたのだが、いまだに一人だ。
家族と言うものを知らない。
窓際の風さえも心地よく感じる。
しかし、端から見ると、奇妙な光景だろうな。
着替えの終わったミナは、やっと見れる姿になっていた。
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