3人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ
ふいに彼女が顔を上げ、不思議そうに僕を見つめた。
吸い込まれるような青い瞳だった。
何だか気恥ずかしくなった僕が微笑むと、彼女は少し間をおいて表情を和らげ…同時に再び両の眼から大粒の涙をこぼした。
不思議と僕から恐怖は消えている。
急いで持っていた枯れ枝を積み重ねて、火を起こした。
焚き火の灯りがぼんやりと2人を照らす。
語る言葉も何もおもいつかず…パチパチと枯れ枝の焼ける音だけがする。
彼女は口に手をあててゆっくりと白い息を吐く。
やがて、彼女と視線があったとき、僕は長い間彼女に見とれていたことに気付き、ひどく狼狽した。
落ちつきを取り戻そうと、再びヴァイオリンを手にとる。
ヴァイオリンは僕の心を隠すように陽気にうたう。
最初のコメントを投稿しよう!