記憶~独奏~

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ふいに彼女が顔を上げ、不思議そうに僕を見つめた。 吸い込まれるような青い瞳だった。 何だか気恥ずかしくなった僕が微笑むと、彼女は少し間をおいて表情を和らげ…同時に再び両の眼から大粒の涙をこぼした。 不思議と僕から恐怖は消えている。 急いで持っていた枯れ枝を積み重ねて、火を起こした。 焚き火の灯りがぼんやりと2人を照らす。 語る言葉も何もおもいつかず…パチパチと枯れ枝の焼ける音だけがする。 彼女は口に手をあててゆっくりと白い息を吐く。 やがて、彼女と視線があったとき、僕は長い間彼女に見とれていたことに気付き、ひどく狼狽した。 落ちつきを取り戻そうと、再びヴァイオリンを手にとる。 ヴァイオリンは僕の心を隠すように陽気にうたう。
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