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夏の暑さも 君へのきもちも
『暑い夏の中で、』
「これ食いたい」
君が指を指した方に顔を向けると、いろんな色で魅了するそれは美味しそうなかき氷があった。こんな暑い中、かき氷とか最高だろうな。
「あっ、美味しそう~」
このくそ暑いなか、水もアイスも抜きで学校の補習から帰っているところ。せっかくの夏休みなのに、補習なんて最悪で、でもサボらずに毎日行ってるのは、君がいるから、なんて君には絶対言えないけど。
「最近食べてないもんなぁ」
汗が体中にまとわりついて気持ち悪い。たまに吹く風が体を通ってすごく気持ち良くって、思わず目を瞑ってしまうほど。
「奢ってよ。」
君が放った言葉に、大層ビックリしたちょっとオーバーな表情を見せた。いきなり、なにを言い出すんだこの男は。
「今百円しかないもん。」
頬を膨らませて君にねだるも「俺も金ねえ」とケラケラ笑っていた。
「おばちゃん、ブルーハワイひとつ」
「あいよ。」
ザザーと、氷を削る音が、夏らしくて好きだ。ふと君を見ると、氷を削ってるおばあちゃんを綺麗な横顔で見ていて、ポッと顔が赤くなるのが分かった。
「見とれないでくれない?」
「み、見とれてないからっ!」
くくと笑いをかみ殺してる君はホントに無邪気で、こんなにも惚れてる自分が少しだけ悔しくなった。馬鹿みたいに惚れてる自分。
「はいよ、百円」
おばあちゃんが青色のシロップをかけてくれて、君は「出して」と言って私を見た。
「わ、私が出すのっ?」
「見物料。」
「だ!だから見てないってば!」
弱みを握られたように焦りながら財布から一枚小銭を出して、おばあちゃんに渡した。
「もぅ~…今度なんか奢ってよ?」
「ふぁいふぁい」
「…てゆうか、私も食べたい」
思いっ切り頬張りながら食べる君は、ホントに可愛いくって、抱きしめたくなった。
「また見とれてる」
「な!だから―」
意見する私の言葉は途切れて、唇にあったかい感触。
それと同時に
流れる甘いシロップの味
離れた私の唇を見ながら君はふっと笑って、「顔赤いよ?」と呟いた。
君のした行動がまだ理解できないでいると、「食べたかったんだろ」と言って私の頭を撫でた。ぽかんとしていた私は、急に現実に引き戻される。
君の勝ち誇った表情が悔しくて
そっぽ向く君に
愛のこもった
キスをした
―end―
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