不夜城→side妖

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「狐のクセに良く分かったな……いや、狐だから分かったのか」 酒呑童子が微笑む。 口元は弧を描いているのに、瞳は笑っていない。 『一体、何を考えている?』 「別に。俺達は金になる奴に味方するだけだ。無論、一番に優先するのはプライドの方だけどな」 「俺は酒呑の指示に従うのみ。ただ今回は俺の意思でもある」 言い方は違うものの、酒呑童子と茨木童子の意見は同じ。 欲しいモノは奪う。 それは賊の基本。 盗賊が盗賊であるため、最低限に身に付けなければいけない『心』。 夜琥は歯軋りをする。 伽羅と自分を切り離すため、2人はここまで連れてきたのだ。 『さすが賊。どこまでも低劣よ』 「お褒めの言葉をありがとう。安心しろ。伽羅は俺達が貰う」 茨木童子の言葉に、一瞬だけ気を取られる。 それが命取りだった。 「喰らえ!! 狐!!」 「俺の牙は酒呑の為!! 酒呑が望む以上、この腕を振るい続ける!!」 2人が動いた。 刹那、強い突風が吹き荒れる。 『くっ』 「ははっ、弱いぞ狐!!」 「位が落ちた事により、本来の力を失ったか!!」 風の刃が、夜琥を襲う。 位が落ちている状態で、2対1では勝てない。 もう、ダメだ。 そう思った瞬間。 夜琥 愛しい、伽羅の声が聞えた。
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