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『酒呑、なぜ伽羅を連れて行く気になった? 危険しか無い事くらい分かるだろうに』
「俺としては怖い目に遭って、俺しか頼れる存在が居ないと確信させたい」
飄々と答える酒呑童子に、夜琥は瞳を輝かせる。
妖だけが持つ、金色の瞳。
金色の瞳を持つという事は、妖だという証だ。
「まぁ、怒るな。お前は神から『護る』しか教えられていない。だから俺達のやり方が理解出来ないんだろう?」
『守る以外にどうしろと? 伽羅の抱えている力を、お前は知っているだろう?』
「その点に関しては、なるべく避けるようにしている。今、伽羅が『覚醒』しちまったら、元も子も無い」
「……酒呑」
「分かっていぜ、茨木。これ以上、喋るつもりは無い」
酒呑童子と茨木童子。
妖怪の世界で知らない者は居ない、有名な盗賊。
酒呑を頭とし、その手助けを行っているのが茨木。
どこで2人が知り合ったかは定かではないが、彼らに目を付けられる事は『不幸』である。
「俺も酒呑の考えに賛成だ。言っておくが、酒呑の意見だからじゃない」
『個人的な考えで辿り付いたというのか?』
「そうだ。伽羅はこれから妖と必然的に関わってくる。ある程度耐性を付けなければ、発狂するだろう」
茨木童子の尤もな発言に、夜琥は口をつぐむ。
確かに『伽羅』の存在は、土蜘蛛に見つかってしまった。
彼が伽羅の事を秘密にするとは限らないし、またいつ襲ってくるかも分からない。
「一番良いのは俺達と共闘する事だ。違うか?」
『……皮肉な話だが、それしかあるまい』
「だったら、俺達の意見も尊重して欲しい」
『……』
苦虫を噛み潰した顔。
その言葉に相応しい表情で、夜琥は頷いた。
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