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渋々だが、狐が認めた。
思わずニヤニヤと笑いそうになるのを堪えながら、酒呑童子は言った。
「じゃあ決まり!! 伽羅には事後報告って形で知らせておくぜ。……伽羅!! ちょっと聞いてくれるか?」
未だ妖の世界に行くのが嫌なのか、3人から少し離れた距離に伽羅は居る。
本能が、警鐘を鳴らしているのだろう。
行ってはいけない。
戻れなくなる、と。
「これから先に俺達が偵察する。安全だったら、連れてくね~」
酒呑童子の呑気な言葉に、伽羅は『分かった』と頷く。
これもまた、本能で知ったのだろう。
逃げられない。
行くしかない、と。
「さて……行くぞ」
酒呑童子の金色が輝き、血の色に似た赤毛が逆立つ。
茨木童子は左腕が紅くなり、異常なくらい筋肉質なモノへと変化する。
夜琥は瞬時に悟った。
2人共、本気で乗り込む気だと。
『我だけ、手を抜く訳にはいくまい』
夜琥の金目が光る。
赤狐の頃よりは力が劣る。
だが、鬼に勝てないほど、衰退したワケではない。
『須く見よ。我が力を』
言霊が夜琥に応える。
そして。
夜琥は赤茶色をした妖狐になった。
「う~ん、久々に暴れられる!! スゲー楽しみ」
「左腕の使い方を、新たに開発してみるか」
『グズグズするな。行くぞ』
こうして3人の妖は、常夜の国の扉をくぐり抜けて行った。
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