夏祭りと狐

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町の森に、こんな場所があるとは……。 ここなら学校をサボっても見つからないかも? そう思いながら謎の空間の中央を見てみると、そこには大きな塊が蹲っている。 「うわっ、大きい犬!!」 犬種は分からないけど、薄茶色の大きな犬がグッタリとしている。 見た目はちょっと汚いが、洗えばそれなりに綺麗な犬だと思う。 「……生きてる?」 ツンツンと、近くにあった棒でつつく。 相手は大型犬より一回り大きな犬だ。 下手に触って噛まれたくない。 犬は微かに体を動かし、そしてゆっくり目を開いた。 美しい、金色。 テレビや学校の登下校なんかで犬を良く見かけるけど、こんな綺麗な瞳の犬は初めて見た。 思わず見とれる私に、犬の腹からは可愛い音が聞こえる。 「……お腹空いてるの?」 犬がじっと見つめてくる。 無言の肯定、と受け取って良いのだろうか? いや、そもそも犬は喋らない。 ここは私が空気を読まねば……!! 「ちょっと待って。お祭りの残り物を持ってくるから」 来た道を戻ろうとすると、右服が引っ張られる。 さすが犬。 弱っていても、力が強い。 「何?」 犬はじっと私を見つめる。 どうやら何か伝えたいらしい。 私と茂みを見比べるように、交互に首を動かしてくる。 「こっちが近いの?」 すると犬は、人間が頷くような動作をしてきた。 まるで人間の言葉が分かるみたい。 相当頭の良い犬だと思う。 「分かったよ。そっちから行ってくる」 『クウーン』 くそ、可愛すぎる!! その鳴き声は反則だ。 私は急いで、犬が教えてくれた方向に進んだ。 ホント、私って可愛いモノに弱いな。
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