不夜城→side妖

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不夜城。 眠りを知らぬ街。 日輪が上らぬ、常夜の国。 夜を活動時間とする妖にとっては、理想の国だ。 故に来たがる妖怪は多い。 しかしこの国の『誓約』を守らなければ、即刻処刑とされる厳しい部分もある。 『前に来た時より潤っているな』 「ここ数年、異様な発展を遂げているらしいぞ。理由は……何だっけ? 茨木」 「人間が闇に憧れ、日の光を嫌うようになったからだ。ここ数十年、人は光から闇を求めている」 嫌みったらしく茨木が言う。 酒呑は楽しげに笑う。 ココでは逆立った赤毛も、左右の腕の大きさが違う事も、狐が人語を話すのも、ごくごく普通の光景なのだ。 『さて、あの土蜘蛛はどこに居る?』 「焦るな。ココは奴の居城。いつか遭遇できるだろ」 呑気な言葉を吐きながら、キョロキョロと辺りを見渡す酒呑童子。 茨木童子は黙ったまま、酒呑の後ろを歩くだけだ。 『お主ら、敵の手に踊らされる事は嫌では無いのか?』 「まさか。俺も酒呑も意地がある。ただプライドよりも宝が重要だった場合、宝を取るだけだ」 「それが盗賊の性」 2人の言葉に、ふと、夜琥は違和感を覚えた。 何かが、違う。 この2人は、簡単にプライドを棄てる種族だったか? 鬼である事に誇りを持ち、悪行を重ねるのが『鬼』という生き物のはずなのに―― 『……何だ?』 「ん?」 『お前等は……何だ?』 「俺は茨木童子。俺の頭は、先頭を歩く酒呑童子」 『違う。言の葉で騙せても、匂いまでは誤魔化せない!!』 それはよく知っている匂い。 人間の中にも、同じ匂いがしている奴がいる。 『貴様等、何か隠しているだろ?』 そのセリフに、酒呑童子が笑った。
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