不夜城→side妖

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『伽羅!!』 寸前の所で、風を避け。 夜琥は、走り出そうとする。 ――が、2人の鬼がそれを止める。 「おっと、通さないぜ」 「この不夜城は『争いを行わない』誓約の下、安定した平和を手に入れている。争えば処刑は免れない」 かつて神の僕をしていた狐が、秩序を乱しても良いのか? その言葉に、夜琥は答えられなかった。 「そら見ろ。狐は所詮、神の使い。例え、役職を追放されてもな」 「俺達同様、プライドが高い生物だから融通が利かない」 『黙れ。貴様等に何が分かる』 「分からないね。分かるのは、俺と茨木がこの国の宝を手に入れて、伽羅とラブラブするって事だ」 そして酒呑達が不在の間、伽羅を護るのは土蜘蛛。 茨木がそう言い、夜琥は初めて最初から仕組まれていた事だという事実に気付く。 夜琥は手に入れた情報を元に、頭を回転させる。 今、勝てる方法は無い。 だとしたら、逃げるしか無い。 だが、その逃げ道が無い。 全てが無い。 どうすれば良いのか。 ふと、そんなコトが過ぎる。 それが隙を産んだ。 「懐がお留守だせ!!」 酒呑の風の刃が、夜琥の体を貫いた。 『ぐはぁっ!!』 「もう1発」 間を置かず、今度は茨木の素早い蹴りが夜琥の鳩尾を付いた。 『くっ……』 「残念だったね。俺達は鬼だ。鬼は狐を信じない」 四肢を踏ん張り、何とか姿勢を保っている夜琥。 それに対し、酒呑は不敵に笑って佇んでいる。 殺される。 夜琥は覚悟した。 その刹那。 「酒呑……事情が変わった」 突然、茨木の表情が固まる。 次に彼から発せられた言葉は、酒呑・夜琥の双方を驚かせた。 「土蜘蛛が裏切った」 それは、新たなる物語の始まり。
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