不夜城→side妖

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「酒呑、土蜘蛛が裏切った」 茨木童子の言葉を待っていたかのように。 それまで騒いでいた妖が、一斉に夜琥達を取り囲んだ。 「一体、どういう事だ? 俺達は宝、土蜘蛛は伽羅のお守りだろ」 「何か、不都合な状態になったのだろう。もしくは最初から裏切る予定だったか」 今も昔も、敏腕の盗賊と唄われたコンビ。 土蜘蛛の裏切りにも、平然としている。 「言っておくが、酒呑を敵に回したら、後が怖いぞ」 「何言ってる? 茨木だって、恐ろしいだろ?」 『……フン、また貴様等と共同戦線となるようだな』 助かった。 夜琥は心の底で呟く。 この2人が敵に回ると、厄介で仕方ない。 強いという理由もある。 それに加え、人脈が広い。 この2人に関しては、どこで誰と繋がっているか分からないのだ。 今回の裏切りも、2人のネットワークを考えれば不思議では無い。 「さて、どうする?」 『面倒だ。目に付いた輩から殺す』 「怖いな。狐を敵にしたくない」 怖いと言いながら、2人の盗賊は怯える素振りもしない。 夜琥は姿勢を低くし、スタートダッシュができる状態にする。 酒呑童子は髪を逆立て、己の身に風を纏わせる。 茨木童子は左腕を使いやすいよう、不思議な構えをする。 「用意は言いか?」 酒呑童子のセリフ。 「構わない」 茨木童子が答える。 『10分で片付ける』 夜琥の勝利宣言に似た言葉。 3人が同時に動いた。 その瞬間。 生きた妖は、1匹たりとも居なくなった。
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